【花とアート】仕事には無駄な時間が必要
先日、新宿の武蔵野館で、映画「ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男」を観てきました。
ベルギー出身の世界的なファッションデザイナーのドキュメンタリーということで、劇場はアパレルの方と一目で分かるようなおシャレ〜な方で溢れていました。
だいたい劇場に行っても5割も埋まっていない事が多いのですが、この日は仕事終わりで行ける21時からで、しかも割引デーの水曜だったせいか、はたまた人気のデザイナーなのか、9割くらい埋まっていて、それにまずビックリしてしまいました。
毎年のコレクション準備の様子が淡々と繰り返されるのですが、そんな中で、パートナーと暮らす自宅でのひとときに思わず溜息が漏れます。
ゴルフ場のような広大な庭に、ダリア、薔薇、マリーゴールド、木蓮、シャクナゲ・・・たくさんの花々を育て、パートナーと一緒に花を摘み、美しい部屋に大胆に生ける。
仕事のプレッシャーや苦悩から開放されるように。
新たなクリエイションの源を育むように。
仕事がいくら大切でも、仕事だけしていると、仕事のパフォーマンスが落ちてしまいます。
クリエイションの泉を枯らさないためには、寝る、食べる、働くなどの必要不可欠なことだけでなく、一見無駄と思えるような「余白」が生活の随所に必要だと私は思っています。
たとえば、ボーッとする時間、楽器に没頭する時間、絵を観る時間、髪を丁寧にとかす時間、散歩する時間、いたずらを考える時間、などなど。
そして花を生ける時間も、そんな風に、無いなら無いで済んでしまうけど、あったら心が豊かになって、他の大事なことのパフォーマンスを上げてくれるものだと思います。
ドリス・ヴァン・ノッテンがそういった時間を大切にしていたように。
キッチキチに“やるべき事”だけで時間が埋まっていると、新しく創造的なものが入っていく余地がなくなりますし、自分の身体性のようなものが置いてけぼりになるんですよね。
美しいものを呼び入れ、偏ってしまった自分が中心に戻れるような「余白」をいつも持っていたいものです。
彼の印象に残った言葉。
「毎年メンズとレディースのコレクションを続けていくのは大変なことだけど、
僕の悦びはコレクションが成功した瞬間ではなく、
その前のフィッティングが終わった瞬間に訪れるんだ。
レストランでは、お客さんの前にシェフがその料理の一番のファンであるようにね。」
私の場合も、周りの評価云々の前に、
撮った花の写真を観れた段階かな、悦びのピークは。
その瞬間は、花に自分がどう向き合って、花がどう応えてくれたかを客観的に観れる時間だから。
映画の作りとしては、起承転結がなく、ずっと同じテンポでコレクション準備の様子がこれでもかと続くだけなので、寝ている人もチラホラ(笑)
でも、クリエイションの何たるかを少しだけ垣間見せてもらえただけでも、私にとってはありがたかったです。
映画「ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男」