骨董屋のご主人
アトリエの窓から見える、お向かいの骨董品屋さんがずっと気になっていたので夕方に行ってみたら、ご主人と1時間くらい話し込んでしまいました。(ご主人が9.5割話していた)
向かいに引っ越してきた花生け屋で、道を通るたびに気になっていたお皿を見せて欲しいと言うと、
「すごくいい皿だからわざと通りから見える所に置いておいたんだよ!」
とご主人。やられた!
そこからご主人のマシンガントークが始まり、見たいお皿になかなか辿りつけず・・・
やっとお皿に辿りつけそうになって、お皿の前にあって邪魔だったカップを一旦ご主人にパスすると、「このカップは今は便器で有名なTOTOが東洋陶器会社だった時のものでね~」と、カップについてまた始まる(笑)
結局、お皿はレトロモダンなデザインで素敵だったのですが、7枚もいらないので断念しました。
それにしても、この骨董屋さんは、どのアイテムも味わいがあって刺激的。
「業者から買い取ってるんじゃなくて、この近所に古くから住んでる人たちから直接買い取ってるから面白い品ばかりなんだよ。だから、逆に骨董業者がウチに買いにくるんだよ」とおっしゃってました。
近隣に住む芸術家や料理人もお客さんとしてよく買いにくるのだそうです。
「3000円の刺し身でも、いい皿で出せば5000円で売れるんだよ。そしていい皿を使ってるって分かるような客がついてくれるんだ。“格”というものは大切にしなくちゃだめなんだよ。」
と教えてくれました。
確かに、格の低いものを出していれば、格が低いことにすら気づかないお客さんと付き合うようになり、そういうお客さんはもっと安いものを出せといいかねないような気がします。
モノづくりをする人は特に自分の“格”を上げるよう努めていかないといけないというありがたいアドバイスでした。
私が、今アトリエを整えているところで、高級なものでなくていいから、自分がときめいたものだけを置きたい、そしてプラスチック製品じゃなく、なるべく重厚感や表情のあるものに囲まれたい、と話すと、
「アトリエっていう場所はね、作家の情念が渦巻いてなくちゃいけない場所なんだよ。」
とご主人が教えてくれました。
ご主人は俳句をやっていて、そのような意図の句を友人の芸術家にプレゼントしたのだそうです。
環境によって作るもののインスピレーションを受けたり、生み出したりする場所なのだから、自分の感性に響くもの、感性が反映されたモノに囲まれ、情念の渦を作っていかないといけないってことなのでしょう。
雑貨もインテリアも安く手に入る時代だけど、何だか軽くて無機質で、持った時にずっしりと質量を感じたり、わぁ素敵っていう存在感を感じるものがなかなか無い、と話すと、
「モノには重くなくちゃいけないものと、軽くなくちゃいけないものがあるんだよ」
とご主人。赤楽茶碗なんかは見た感覚より持った時にふわっと軽く持ち上げるのだとか。
そんな話しをしていたら、18時半になっていて、
「本当は18時に店じまいなんだけど」と苦笑いされたので、急いで買い物を。。。。
結局飲み物の器5点セットと、花柄の小さな鉄製小物入れを購入しました。
開けてビックリ、5つとも別の柄。椿っぽい柄が2つありました。椿が好きな作家さんなのかな。
手びねりで一つ一つ焼き上げたという飲み物の器は、包みを解いてみたら、5つとも別デザインの一点ものでした!
小物入れは、見た瞬間、ああ~かわいい!と思えたので、何を入れるかは決めていないけど、買ってしまいました。
何も入らないほど小さいがずっしり重くて、いい質感。吉兆柄っぽくて縁起も良さそうです。
っていうか、何も入らないほど小さい(笑)
「今日は面白い話をたくさんしてくださってありがとうございました。私、杉山といいます」
と店の出口で言うと、
「私は杉田っていいます。お互い山と田ですね♪」なんて女子高生みたいにかわいいことを言ってくれました。
またご主人の面白いお話を聞きに行きたいと思います!