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2017-10-19

息子の父ちゃん

私は、まだ自分が子どものように未熟だったのに親になってしまい、しかもすぐに離婚してしまったので、息子にはかなり苦労をかけてしまった。

せめて、私はもちろん、父ちゃんも離れているけどお前を愛しているんだよ、という事にして育てたかった。

男にとって男親を尊敬できないのも辛いのではないかと思ったから、父ちゃんの悪口は一切言わず、いい所だけを伝えて育てるようにした。

 

今度こそもうやっていけない、と思うくらいシンドい事もたくさんあったけど、とても優しい男に育ってくれた。

息子の進級進学や誕生日の時は、やはり自分の両親や友達よりも、父ちゃんに喜んでほしくて、父ちゃんに息子を授けてくれたことを感謝したくて、ありがとうのメッセージと写真を送ったりした。

息子を悲しませないように、たまには会ってやってね、といつも頼んでいた。

 

養育費は数年でストップしてしまったけど、その事をとやかく言ったら、面倒になって息子に会ってもらえなくなるかもしれない。

本当は財産差し押さえる権利もあるのだけど、結局そういう弱味があるから行使できずに今日まで来ている。

 

でも、だんだんと会ってくれる機会が減ってしまい、こちらからの連絡にも応えなくなってしまった。

息子は、「父ちゃんは俺のことなんてどうでもいいんだ」と思うようになってしまった。

私が一番避けたかった、「愛されてないんだ」という思いを息子にさせたことが悔しくて、

それが少しずつ怒りに変わっていってしまった。

 

そして、ふと、なんて自分はずっとお人好しでいたんだろうと気付いた。

妊娠したと言った時は責任を取るからと言ったのに、私が後戻りもできない、働くこともできない状態になった時にハシゴを外された。

なのに、離婚後もずっと今まで、

「息子が成長できるのも父ちゃんのお陰だよ!ありがとう!」

って、養育費ももらってないのに、心から無邪気に感謝してた。

父ちゃんが再婚すると聞いた時は、涙ぐんで喜んだ。

本当に私はバカだ。

 

息子に寂しい思いだけはさせないでと言ったのに放っておかれるようになってから、(と言っても、それまでだって会えたのは1、2年に1回だったけど)

そんな風に、目が覚めると同時に不満が込み上げてきた。

なんで親である2人の内、私だけが子どもを作った責任を負い続けているのかと。

あのたった一度の受精の責任を私は20年も負い続けているのに、

元旦那は、その受精の結果を、受精に至らなかった何百何千という排出行為と同じように無かったものとして生活し続けている。

生身の人間が生まれ育っているというのに―。

 

そんな風に、感謝の気持ちを持てていた頃には考えもしなかったような被害妄想的な感情が最近フツフツと湧いてきていた。

 


 

今日、息子と晩ごはんを食べている時、なぜか息子を身ごもった時の話題になった。

 

突然の妊娠は、両親に対しても身勝手で申し訳なかったし、

高校の親友に婚姻届の証人を頼んだけど、結婚には反対だと断られてとても悲しい思いをした。

そのくらい、祝福してもらえない妊娠だった。

 

だけど実は、元旦那に妊娠を伝えた時だけは、手放しで喜んでくれた。

「まだ父ちゃんも23歳だよ?付き合って3ヶ月の彼女が妊娠したって言ったら、普通はエッ!て青ざめるか深刻な顔になってもおかしくないよね。

でも父ちゃんはね、一瞬たりともそんな顔はしなかったんだよ。かりんヤッタ〜!って喜んでくれたんだよ」

 

話ながら危うく泣きそうになった。

 

もし、わずかでも顔色が変わったり、考えさせてと言われてたら、その後に産もうって事になったとしても、

せっかく私の中に生まれた命を、当事者である父親にすら喜んでもらえなかったと、ずっと引きずってしまったに違いない。

 

でも、元旦那は、パッと笑顔になって喜んでくれた。

それは、私と一緒に息子を作った相手がその命を肯定してくれた瞬間。

どれだけ嬉しかったことか。

それが本当に、長い長い孤独な子育ての年月の支えになっていたんだった。

 

「バカだよねぇ。未熟で責任取れないくせにヤッタ〜とか喜んじゃってさ!アッハッハ!」

息子を愛してくれない無責任な父ちゃんを恨めしく思う気持ちは何だか消えていた。

命が生まれた瞬間を祝福してくれたことが、彼のくれた最大の愛情じゃないかと思えて。

 

「そっか〜!なんか嬉しいな!」

息子も、自分がこの世に誕生した瞬間、どれだけ両親に喜ばれたかを確認できたのが嬉しかったらしい。

 

父ちゃんと母ちゃんに望まれて、愛されて生まれてきた子。

私がずーっと息子に伝えたかったメッセージ。伝わったようで良かった。

 

ま〜、でも息子と引き続き会って欲しいし、養育費も踏み倒しは許しませんけどね!

 

 

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